今月のパジコ人 廣中薫さん

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ものづくりしているときは忙しくても楽。
一番リラックスできる時間です

今月のパジコ人

廣中薫さん

鎌倉と神戸北野、2つの拠点で制作活動を行う廣中薫さん。神戸芸術工科大学の准教授として若い学生たちと向き合いながら、ジャンルを問わず多種多様なメディアで活発にアートワークを展開し続けています。コロナによって突然もたらされたニューノーマルへと染まりゆく世界で、廣中さんが今、そしてこれから活動していくうえで大切にしていること、面白いと思っていることを伺いました。

部分ではなく
全体に宿るもの

神戸ポートタワーでのアートイベントで、壁に蛍光色粘土の塊を貼るアートワーク実演中の廣中さん。ものづくりが目前で進むなかでインタビューを開始しました。

#Space and Rest 2020 宙と休息2020

今、何を考えながら貼っているんですか?

廣中薫さん(以下、廣): んー、考えない(笑)。というか、直感でココ!っていう立体感覚みたいなのがあって。その部分だけではなく、全体を見ながらやっていくようにしています。そうすることで全体がつながるんです。一見するとこの部分だけをつくっているような感じがしますけど、全体的に周りを見ながら進めています。その部分だけつくり終えて、次!ってやっていくと全体がつながらないんですよね。

絵を描くときも同じですか?

廣: そうですね。キャンバスをいっぱい並べて、5枚描いたり、10枚描いたりするのがすごい好きなんです。広いところに置いて、どんどん描いていく。そうすると希望のものができるんです。作品全体に一緒に宿るものがあって面白い。

今回は神戸のプロモーションの一環として行われたアートイベントですが、オファーがあった当初からこうした構想はあったんですか?

廣: それが全然なくて。最初はガラスに絵を描いてって言っても、あまり乗り気じゃなくて。敢えて展望台に描かなくていいんじゃないかなって思ったんです(笑)。
 あそこはバーがあってその上下にも2階ずつフロアがあるんですが、あんまり人が来なかったので、株式会社ARIGATO-CHANが立て直しされたんです。
 このあたりもだんだんリニューアルしてスタバもできて、港の方も綺麗になって全然変わっちゃったんですけど、以前は若い子たちからあの辺は「死んだ土地」って言われてて、地元の子はあまり来ない場所だったそうです。

そんなふうにして活性化が進むなかで、廣中さんも活動に参加されたということですね。

廣: そうですね。神戸ってわりとレトロな街で、昔から変わっていないところも多くて。以前、鎌倉市の小学校とかでペイントで街の再生をやったり、鎌倉市のプールでも35mくらいのところに絵を描いたりしたことがあったんですが、やっぱり予算が十分にあるわけでもないので、新しく建物を建てたりとかはできないんです。そんななかで、なんか面白いことをしたいというときに、ペイントでも打ちませんかって提案してきた経験はあったので。

#Space and Rest 2020 宙と休息2020

粘土の物質感"もりもり"が
大好き

アートワーク実演終了後、インタビューを再開。ここでまずは廣中さんとパジコの関係について聞いてみました。

廣中さんとパジコの出会いはどこだったんですか?

廣: やっぱりTISが一番意識したっていうか。もともと粘土はすごい好きで使ってましたけど、どこの会社がどうのこうのっていうのがあんまりわかってなくて。粘土はほんとに趣味だったんです。TISのおかげで、いろんな会社・製品があってっていうことを知りました。

木村(パジコ副社長 以下、木)廣中さんが、以前1回パジコにいらして、会議室でずっと話してた記憶があるんですよ、最初。

じゃあ、TISで知り合って、粘土も使ってますというお話で来ていただいていたんですね。

廣: 粘土の物質感というか、粘土っぽいのが大好きで。もりもりが好きだし、テクニックも大好きだし。そういうのをお聞きしたいなと思って。
 そういえば20代の頃にも、ゴールデン社のメディウムについて知りたくて、アメリカまで勉強しに行ったことがあったんです。ゴールデン社はアクリル絵具で知られる会社で、ニューヨークから7時間ほど新幹線のようなメープルリーフ(列車)で行き、そこからまた2時間行ったところにあるんです。
 当時、ゴールデン社の製品を取り扱っていたターナー色彩株式会社の方が、私がやっていた絵に盛る手法に興味を持ってくださって、『デザインの現場』という雑誌の広告に見開きで使ってくださったんです。アメリカにメディウムを習いに行ったのはその方の勧めもありました。その後もターナーから時々提供を受けるようになったんですけど、もりもり好きはずっと止まらなくて。ああゆうぐずぐずした塊が大好きなんです。TISで結構粘土のことをさらに知ったら、やっぱりもりもりがすごいかわいくて。

そうなんですね。パジコの製品もご存知でしたか?

廣: 知ってはいたんですけど、すごく意識するようになったのはTISからですね。コロナになってからは、アマゾンですっごいレジンの商品を買ってます(笑)。

本当にありがとうございます。じゃあレジンもやってみたということですか?

廣: はい、でもすっごい下手っぴです。これもすっごいかわいくなくて。

あ、スマホケース!

廣: ただ単にぐちゃぐちゃに付けて。私いつも家に帰ると、携帯は除菌シートで拭いてるからボロボロで!

日本ホビーショーにてパジコとコラボ。(2015)

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